わかりやすい文章の書き方

「うーん……、これちょっと難しいから、もっとわかりやすく書こっか!」

 

爽やかな笑顔を向ける彼の前に、私は呆然と立ちすくんだ。

イラっと来る、うんざりする気持ちを、視線に込めてみた。

そんな視線を気にすることもなく、彼はさらに言い放つ。

「小学生5年生くらいに向けるような気持ちで、もっと読みやすくしてみて♡」

 

その言葉、何回目?

もうかれこれ、11回目のリテイクなんですけど……

これ以上、かんたんにしたら、お客さんバカにすることになりませんやろか。

小学校5年生どころか、幼稚園児童に向ける気持ちで書いたんですけど。

こーんなうっすい文章で、人集められるん?

 

起業して数か月目、当社の広告用の文章を書いている時のことでした。

記事の編集役を引き受けてくださった、当時のコンサルタントさんからのご指摘に対する私の態度はすこぶる悪かった。忙しいさなか、時間を取ってくれているのに心の中では悪態をついていたんです。

 

当時の私の文章はガッチガチの専門用語バリバリ。

とにかく読みにくい、難しい、つまらない文章を量産しておりました。

 

本人の意図としては、しっかりアツい記事を重ねて知識欲を高めたい人のために、懇切丁寧に書き込んでいたつもりなんですね。

今思えば、「わかりやすさ・読みやすさ」の意味をはき違えていたんです。

 

起業すると誰もが「ライティング」の壁にあたります。

集客や教育、サービス説明に、案内、紹介にも、文章はどこまでもついてまわります。

クライアントとのやり取りにも文章力はかならず必要なので、大人としてもたしなみが問われる所です。

 

ライティングの上手い人はビジネスを有利にすすめることができます。

言葉を使って人の心を動かすことができ、言葉の力で商品やサービスを多くの人に広め、気持ちよく買うことができるようにリードすることができるからです。

 

モノは言いよう、言葉は使いよう。

同じ言葉でも使い方ひとつで、人を喜ばせたり怒らせることができます。

 

丁寧に細かく、具体的に書けば読みやすくなるのか? と言ったらそうではありません。

逆にまわりくどい、要領を得ない文章になることがあります。

 

じゃあ、要領とポイントを箇条書きにすれば伝わるのか? というと、そうとも限りません。

短い文章で専門用語が並ぶと直感的にわかりやすくとも、心情的にはわかりにくい表現になってしまうことがあります。

 

では、「わかりやすさ」とはなんでしょうか?

私が思うに、わかりやすさとは『自分の中の子供の部分が喜ぶこと』ではないでしょうか。

 

子どもは、飽きることがものすごく速いです。

「つまらん」と感じたら容赦なく切り捨てます。

無責任にさして興味のないことには冷たくドライに突き放し、興味のあることにはトコトン食いつく。

子どもは何か行動を始める時には計算をしません。

大人のような打算が働きにくいんですね。

 

 

誰しも、子どもだった時があります。

そして、その子供の部分は誰もがまだ心の中に抱えているんですよね。

 

今の時代、膨大な情報があちこちに流れています。

今必要とされている技術は情報をとりにいくことではなく、情報を捨てる技術と言われているほどです。

 

大人として責任をもって、真剣に”すべての情報”を取る人はほぼいません。

たいていの人は子供のように、無責任に何となく情報をつまみ食いしています。

そして飽きたら捨てます。(忘れます)

 

そんな中で生き残るためには、『何となくおもしろそう』に引っ掛かることが大事なんですね。

なんだかよくわからないけど、心に残る。

なんだかよくわからないけど、ガツンと響く。

なんだかよくわからないけど、目に留まる。

そんな直感的なフックをひっかける文章力が今、必要とされています。

 

飽きが来ないよう、夢中になれる仕掛けがほどこされている文章が「わかりやすい」文章です。

 

起業当初の私に足りなかったのは、無責任ですぐ飽きる子供も喜ぶような『無意識の仕掛け』を施す工夫でした。

 

おそらく、責任感があって、使命感に燃えている人ほど、そんな工夫を仕掛けるのは骨が折れると思います。

自分のモチベーション方向とは全く逆の方向性ですから、「こんなんで大丈夫? 伝わる?」と不安になる人もいるかもしれません。

難しい言い回し、専門用語が問題とは限りません。

ちょっとした言葉の使い方、語尾やキーワードを少し変えるだけで一気に読みやすくなる可能性があります。

 

手っ取り早く、わかりやすく、読みやすい文章になっているかどうか確かめる方法があります。

それは文章全体を【ひらがな】にしてしまうこと。

 

頑張り屋さんで勉強が好きな人ほど、大人が使う言葉を好みます。

そう、「好みます」って言葉を使っちゃうんですよね。

「好きなんです」って書けばいいのに(笑)

がんばりやさんで、おべんきょうがすきなひとは、おとなのつかうことばがすきなんです。

ひらがなでも読める文章は全体的にわかりやすく書かれていると脳は認識します。

ひらがな表記でも大丈夫なキーワードは、平易な言葉で、誰もが読みやすい文章にするために大事な構成要素なんですね。

 

基本的に”読むこと”は人にとって「ストレス」なんです。

頭の中で文字と、言葉と、事象を同時変換させていきながら、脳内で再構築して追体験していくのでとんでもないエネルギーを使うんです。

ひらがなでもおもしろく読める文章は、その変換を効率的に行えるので読みやすいんです。

 

長くなってきたのでそろそろまとめますと、

 ✔わかりやすさとは飽きさせないこと。

 ✔読みやすさとはひらがなにしても読めること

最後までしっかり読める文章になっていたら成功です。